Grand Archive Lore | Casella ー The Weight of Looking Up 見上げることの重み

Grand Archive Lore

Grand Archive Lore | Casella ー The Weight of Looking Up ~見上げることの重み~

感情から魔法が生まれる世界。

Casellaは、自らの力を、もう一度その手に取り戻せるのか。

それとも——力に、支配されてしまうのか。

登場キャラクター

Casella
本編の主人公。Homeworld出身の若きChampion。
歌に魔法を宿す“songstress(歌姫)”。
arcaneの力を授かり任務に臨むが、その力を制御できずにいる。

Lorraine
緑髪の戦士。揺るがぬ信念と、心身両面の強さを持つ。
Casellaを救い出す。

Dante
一見おそろしげだが、心優しく、物事を正そうとする強い意志を持つ人物。
(※Dante編の主人公)

Forese
ピンク髪の同僚アイドル。
Casellaをライバル視しているが、彼女のステージを代役で繋ぎ、連絡を寄こす。

Lucca
Casellaのマネージャー。ツアーの誘いを持ちかけた人物。

Lucia
Danteが見つけた幼い子供。Casellaよりも強い信念を持つように見える。

Uncle Zuo(ズオおじさん)
Casellaの父の友人。彼女をホテルに軟禁する。Beatriceと手を組んでいる。

Mary
かつて歌で世界を救った、完璧な歌姫。Casellaが憧れ、そして重圧を感じる存在。


その他

Dis
物語の舞台となる巨大都市。
Higher Plane(上位界)とLower Plane(下位界)に分かれ、複数のDistrictで構成される。
Casellaが軟禁されたのはDistrict 05のLegionnaire Heights。

Asphodel(アスフォデル)
Disを含む世界。Champiionたちが救うべき地。

Homeworld
Champiionを育て、各世界へ派遣する、すべての始まりの世界。
Casellaの故郷。

Champion
Grand Archiveの使者として、滅びかけた世界を救う存在。Casellaはarcaneの力を得て、初めてChampionになったと感じた。

songstress(歌姫)の魔法
歌に宿る魔法。
Aenean Disorderへ作用し、分子レベルの安定剤になるとも仮説される。
だがCasellaの力は制御を失い、聴衆を血に飢えた狂乱へと陥れてしまう。

Aenean Disorder
能力が暴走する疾患。音楽の魔法がこれに作用しうるとされる。

Elysian
Aenean Disorderを持つ者を鎮めるとされる存在。Casella自身はElysianではない。

arcane / aether(アルケイン / エーテル)
魔力の源となる力。Casellaの歌は、不安定なaetherの波となって聴く者すべてを侵してしまう。

Virelai Academics
Casellaが通った、上位100柱の神の一柱“Virelai”の名を冠する学院。

ResonanTech Module
録音した音楽を再生できる装置。
ただし再生ではaetherを感じ取ることはできない。


Casella ー The Weight of Looking Up ~見上げることの重み~

The Weight of Expectation ~期待という重圧~

かつては、観客の歓声が力になった時があった。

だが今、あの叫びを思い返すと、感じるのはただ、ためらいだけだった。

肩に乗せられた期待は、もはや背負いきれないほど重い。
問題からただ逃げても、それが解決しないことは分かっている。
それでも体は、ぐったりと力が入らなかった。

どれだけ動けと念じても、体は言うことを聞かなかった。


Disの灯りが、窓越しにきらめき、差し込んでくる。
まるで「カーテンを閉めてみろ」と挑発するかのように。

街の喧騒が、くぐもった唸りとなって彼女を取り巻いていた。
パワーセルを運ぶドロイド。
要人を乗せて走るバン。
不審な市民を探すヘリコプター。
そして、自分の歌を流すデジタル広告の轟音。

濃紺の髪が一房、顔にかかる。
街の音を遮ろうとする、ささやかな抵抗。

目を閉じても、意味はなかった。
光は瞼を透かして滲み、街のざわめきはかえって大きくなり、そして観客の中のファンたちの顔が、再び脳裏に鮮やかに浮かび上がった。


ブブッ。

彼女はゆっくりと目を開け、傍らのサイドテーブルに置かれた電話に目をやった。

Casella! どこにいるの?!
あんたのステージ、私が代わりに繋いでるんだから、終わる前に早く来なさいよ。
あんたのファン、全部もらっちゃっても文句言わないでよね >:P

Foreseからだった。

Foreseからメッセージが来たことなど、一度もなかった。
Casellaがあのピンク髪の同僚に、気の利いた言葉を送ろうとしても、たいてい「既読」がつくだけで、無視されるのが常だった。

ずっと、Foreseと親しくなりたかった。
だが彼女がCasellaをライバルと見なし、どこか侮蔑めいた感情を抱いているのは、明らかだった。

そのForeseが、こんなメッセージを寄こすなんて。
——自分は本当に、みんなを失望させてしまったに違いない。


顔を背けたとき、視界の隅に、床に転がる自分のstaff(杖)が映った。

Zuoおじさんに閉じ込められた、この高層ホテルの一室。
その絨毯の上に、無造作に投げ出されている。

美しく、マイクも兼ねたその杖を、使えることがあんなに嬉しかった。

これは初めての任務だった。
arcaneの力を授かったとき、ようやく本当にChampionになれた気がした。

それなのに今、周りでは人が死に、世界は終わろうとしているのに、自分にできるのは、自分のことばかり考えることだけ。
——すべては、ただ自分の自尊心を満たすためだったのだ。


せめて、Maryのようであれたなら。

Maryは完璧な歌姫で、魔法の制御を失うことなどなかっただろう。
それ以上に、大事な催しの前に自己憐憫に浸るなんて、絶対にしなかったはずだ。

Maryの落とした影は、Casellaが埋めるにはあまりに大きすぎた。

Luccaに名刺を手渡された、あの瞬間から、それは痛いほど分かっていた。
そもそも、どんな根拠のない自信が、あの誘いを引き受けさせたのだろう——今となっては、そう思わずにいられなかった。


Casella自身はElysianではない。
だが音楽の魔法もまた、Aenean Disorderに作用することが知られており、分子レベルでの一種の安定剤ではないか、と仮説されていた。

もっとも、Casellaはそういったことに詳しいわけではない。
Homeworldでどれだけ学んでも、これに備えることなどできなかっただろう。

彼女が知っているのは、ただ一つ。
Maryの歌は、かつて世界を救った。
——一方、Casellaの歌姫の魔法は、聴衆を血みどろの狂乱に陥れるだけだった。


それでもCasellaは、運営チームの会話を耳にしたことがあった。
音楽が生み出す魔法を、どうにか利用する方法があるらしい、と。

録音した音楽を流せるResonanTech Moduleのような装置は、すでに存在する。
だが、そうした装置で再生しても、aetherは感じ取れない。

自分の不安定な魔法が、商品にされる——その考えに、彼女は身震いした。
いったいどんな結果を招くか、知れたものではない。


街並みを見下ろすと、地平線の向こうに、陽がゆっくりと沈んでいくのが見えた。

その光は、砂時計の砂のよう。
——彼女の歌を聴いた者すべてを侵していく、不安定なaetherの波のように。

父の友人に捕まったのは、ただの形式にすぎなかった。
彼がどうやってここへ来たのか、なぜBeatriceと組んで働いているのかはともかく——「お前には荷が重すぎる」と告げたZuoおじさんは、正しかった。

中途半端な野心しか持たない自分が、Championとして通用するはずもないと、分かっていて然るべきだったのだ。


膝に頭をうずめ、Casellaは泣くにまかせた。

それでも、Asphodelはきっと救われる。
LorraineとDanteが、自分などいなくても、道を見つけてくれると信じていた。


The One Who Believes ~信じてくれる人~

ブブッ。ブブッ。ブブッ。ブブブブッ。

再び、電話が震え出した。
今度は、着信だ。
——Luccaからに違いない。

Asphodelでの旅の中で、Casellaには人と出会い、友を作る機会がほとんどなかった。
時間の多くは、リハーサルと、新しい歌を覚えることと、思い悩むことに費やされた。

このツアーを引き受けたのは、Asphodelを見て回るのに良い方法だと思ったからだ。
Disの全貌を見られる、手軽な切符。

異郷の世界に馴染めず苦しむChampionの話は、いくつも聞いていた。
任務の途上、飢えという名誉なき理由で命を落とす者さえいた。

だがツアーがあれば、食事は与えられ、Higher Planeにも出入りでき、外界の厳しさからも守られる。
彼女が戦っていた唯一の相手は、自分自身だけだった。


自分自身の野心を持てないことを、彼女は嫌悪していた。
そして、あんなにも決然として見える周りの人々を、羨んでいた。

Lorraineの信念は、いつも揺るがない。
その努力は、肉体と精神、両方の強さとなって現れていた。

Danteは、最初こそおそろしい人物に見えた。
だがその優しい心と、物事を正そうとする強い意志は、明らかに称賛に値するものだった。

Danteが拾った幼い子供のLuciaでさえ、自分より強い信念を持っているように感じられた。

Casellaには、復讐の物語もない。
トラウマになるような幼少期もない。
怪しげな研究所で実験されたわけでもない。

——ここまでの人生は、ずっと容易いものだった。
そのことが、彼女をいっそう惨めな気持ちにさせた。

今この瞬間でさえ、彼女がやるべきことは、ただ歌うことだけ。
それなのに……


ため息を吐きながら、彼女は再び膝に顔をうずめた。

ファンから感じる失望は重かった。
だが、自分自身に対して感じる失望ほど、重いものはなかった。

ステージで歌うことは、かつては何の苦もなかった。
これこそ自分が生まれ持った天職だと、いつも自信を持っていた。

スポットライトに踏み出す直前の、胸の高鳴り。
ファンの興奮した顔を見たときの、アドレナリン。
一緒に歌う観客の声と、自分の声が溶け合う瞬間。
ペンライトと、掲げられた手の、大海原。

——そのすべてが、あんなにも心躍る、美しいものだった。

だが今は、それを思い浮かべるだけで喉が詰まり、呼吸が浅くなる。
いつから、歌うことがこんなふうに感じられるようになったのだろう。


Casellaは、幼い頃の記憶をたぐり寄せようとした。
その回想の中に、何か希望のようなものを探して。

母のことはよく覚えていないが、父は才能あるピアノ弾きだった。
仕事で不在にしていない、わずかな折には、彼が歌を教えてくれた。
広大な屋敷で、父がいないときは、乳母たちが一緒に歌って、彼女を元気づけてくれた。

父は完璧主義者で、彼女に高い期待を寄せていた。
彼女の素質、亡き母への面影、そして待ち受けているであろう輝かしい未来を、よく口にした。

父は彼女の音楽の才を見出し、彼女は上位100柱の神の一柱の名を冠する学院——Virelai Academicsに入学した。


彼女は、完璧な生徒だった。
いつも満点を取り、授業に遅れることもない。

後輩たちは彼女を慕い、先輩たちはその素質を讃えた。

Championになりたいという願いが芽生えたのも、そこでのことだった。
仲間や師が幾度となく勧めるうちに、女神Virelaiその人の跡を継ぎたいと思うようになったのだ。

Casellaはいつも、その理想像を保つために懸命に努力し、仲間と過ごす時間はほとんど持てなかった。

孤独は、問題になったことがなかった。
ごく幼い頃から、それは彼女にとって当たり前の、自然なことだった。

周りの人々の敬愛だけで、進み続けるには十分だったし、それは彼女の心を、目的意識で満たしてくれた。


だが、どの幸せな記憶も、今や一つの恐怖に洗い流されていた。
——今のこの惨めな姿を見たら、あの人たちはどれほど失望するだろう、という恐怖に。

初めて、この思いが、彼女を立ち止まらせた。

自分はいつも、誰かの残した足跡の上を歩いていた。
最初はVirelai、そして今はMary。

——では、“自分”が望んでいたものは、何だったのか?

人生を通じて、その問いも、その答えも、一度として考えたことがなかった。
そう気づくのは、奇妙な感覚だった。

彼女の望みはいつも、周りの人々の望みと期待を、映したものにすぎなかった。


好きな色は? 好きな動物は?
雨の日と晴れの日、どちらが好き?
好きな花はある? そもそも、花は“好き”なの?

——分からなかった。

自分は、“誰”なのか?

また、ため息が漏れた。


ふたたび自己嫌悪の淵へと沈みかけたそのとき、彼女の思考は、猛烈なノックの音に断ち切られた。

防音壁越しに、かろうじて聞こえるくぐもった声。
だがそれは、はっきりと彼女の名を呼んでいた。

Zuoおじさんではなさそうだ。
——家に連れ戻すと脅していた彼が、戻ってくるには早すぎる。
それに、彼にはまだ訊きたいことが山ほどあった。

Luccaだろうか?
Casellaは、さっきマネージャーの電話を無視してしまった。
——きっと、激怒しているに違いない。

彼女は慌てた。
どんな言い訳をすればいい?

「ちょ、ちょっと待って!」
電話を探して、目を泳がせながら、彼女はどもった。


突然、銃声としか思えない音が聞こえ、ノックが止んだ。
そして——沈黙。

銃声? ここで? そんなはずない。

ここはLegionnaire Heights。
District 05だ!
——こんな場所で、悪いことなど起きるはずがない。

彼女は、怯えながらドアを見つめた。

まるでドアの方が、じっとこちらを見返し、少しずつ近づいてくるかのようだった。
自分は、身じろぎもせず座っているというのに。

沈黙が、部屋を歪ませ始める。
それに呑み込まれ、彼女の呼吸は浅くなっていった。


バンッ!

ドアが蝶番から吹き飛び、背の高い緑髪の少女が、戸口に立っていた。

「Casella!」
少し息を切らしながら、彼女は気を引き締め、こちらへ駆け寄ってきた。

「Lorrain——」

名を言い終える間もなく、Lorraineが彼女の手を掴んだ。
ガラスが砕け散る中、Lorraineは窓から飛び出した。
——Casellaを、その手に連れて。


Lorraineは、Casellaを見て微笑んだ。
突然の出来事の連続に呆然とし、Casellaはただ見つめ返すことしかできなかった。

「大丈夫」
緑の髪を風になびかせ、Casellaの手を握りながら、Lorraineは微笑んだ。
「ただ、あなたらしくいればいい。あなたは、すごいことができる」

地面に叩きつけられる寸前、Lorraineが自分を腕の中に引き寄せる。
Casellaは目を閉じた。

——だが、久しぶりに、自分が怖がっていないことに、彼女は気づいた。


Sing for Herself ~自分のために歌う~

Casellaは、やっとのことで目を開けた。
迎えたのは、ステージの照明だった。

背後で、音楽が鳴り始める。
ライトは、目がくらむほど眩しい。
喉は、からからに渇いていた。

彼女は瞬きし、焦点を合わせようともがいた。
マイクを握る手は震え、手のひらには汗が滲む。

口を開くと、声はわずかにかすれた。
忍び寄る影のように、あのためらいが、再び内側で這い上がってくるのを感じた。

彼女はぎゅっと目を閉じた。
すると、Lorraineの声が、再び心の中に響いた。
そして、Foreseの差し伸べた手が、自分をステージへと引き上げてくれるのが見えた。


Casellaは、深く息を吸った。

突然、穏やかな波が、彼女を洗い流した。

自分を信じられなくても。
——自分を信じてくれる人が、他にいる。

人を救うという重荷は、下ろしてしまおう。
誰かの期待に応えたいという願いも、投げ捨ててしまおう。

今はただ、歌おう。


乳母たちと歌ったように。
父のピアノに合わせて歌ったように。

誰も聴いていないかのように、歌おう。

——自分のために。


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Sources

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